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2015年のお浚い「雨ノ記憶」の本の仕様

2015年のお浚いとして個展のために制作した本「雨ノ記憶」の制作過程について書きます。
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当初は、100部を想定し自費出版するはずでしたが、用意していた予算だとかなりの部分でデザインや構造で妥協せざる得ない事が多く、1ヶ月ほど各専門業者さんにお話をうかがい、悩んだ末に今回は販売目的ではなく、自分の作りたかった本を作る事にしました。
100冊を想定していた部数も5冊だけとなりましたが、その分単価を上げる事ができ、ある程度妥協せず作れました。


■ 本の仕様

・オンデマンド印刷(印刷は、オフセットでやりたかったのですが、今回は諦めました...)
・布による上製本<手製本>
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■ 本の構成

「雨ノ記憶」という本は同時に2つの物語が進行します。
「雨が降り、あがるまでの時間」とその雨脚の強さ(場面)毎に「記憶の中の別の物語」が進行し、最後は両方の物語が繋がります。

これを実現させるために考えたのがアンカット袋綴じの製本です。
読者は、ペーパーナイフで切りながら次のページを捲ります。

アンカットの表側のページには「雨が降り、あがるまでの時間」を横幅1600mmの絵を描きました。
カットして開いた裏側ページには「記憶の中の別の物語」を進行させました。

本の内容については、前回のブログに書きました。

また、書籍内にも登場する実際の傘も制作し、傘の生地と本の表装のデザインを合わせました。


■ 本に使用した素材

[ 表装と傘に使用した生地 ]
・ビエラ
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[ 見開き ]
・NTラッシャ

[ 遊び ]
・MBSテック
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[ 扉 ]
・クラシコトレーシングペーパー
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[ 本文 ]
・エアラス
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今回製本して驚いたのが、見開き使った糊の水分が遊びとして使用したMBSテック、Tカラペには反応せずに扉に使ったクラシコトレーシングペーパーには反応するという現象がありました。トレーシングペーパーは、湿度に弱いことは理解してましたが、2枚の紙を通して反応する事に、今後トレーシングペーパーを使用する場合は注意が必要だと言う事が分かりました。またはNTパイルに変更しても良いかもしれません。

今回製本は手製本のヨンネさんにお願いしました。

古本と手製本 ヨンネ
http://yon-ne.com/
ヨンネ(著)「はじめて手でつくる本」が出版されました。

ご協力いただきありがとうございます。
2016年も新しいプロダクトを作ってゆきたいと考えています。